今年のインフルエンザワクチンは効果があるのか?

2017年11月6日、米科学アカデミー紀要(PNAS)で発表された論文より。

論文の筆頭著者であるペンシルバニア大学(University of Pennsylvania)の微生物学准教授、スコット・ヘンズリー(Scott Hensley)氏は、「現在のH3N2型の病原体は鶏卵ではうまく育たないし、病原体が鶏卵の中で適応変異しないまま育てることは不可能だ」としています。また病原体が変異するとワクチンがそれに応じて変化しなければ効果が失われるとも説明しています。

「現在人々に接種されている2017年のワクチンは2016年と同じH3N2型(A香港型)で、もし今シーズンもH3N2型が流行すれば、また(予防が)困難な年になるだろう」としています。

2016~17年にはH3N2型(A香港型)の変異型インフルエンザが流行しましたが、鶏卵を利用して大量生産されたインフルエンザワクチンはこの変異型に対応しておらず、予防接種の効果があった割合はわずか20~30%にとどまりました。この結果を受けて、今春、厚生労働省はA埼玉株でのインフルエンザワクチンを試みました。

しかしながら、この計画はニュース報道や当院のホームページ上の「お知らせ」にも記載しましたように、失敗しましたので、現状のインフルエンザワクチンが品薄になっています。オーストラリアで大流行している「殺人インフルエンザ」(A香港型の変異型インフルエンザ)が流行した場合、国産ワクチンを接種しても、「20~30%しか効果がない。」ということです。